最新英語学・言語学シリーズ
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【監修】 加賀信広・西岡宣明・野村益寛・岡崎正男・岡田禎之・田中智之
20世紀後半の言語学研究を振り返ってみると、大きな流れとして、チョムスキー革命による生成文法理論の登場と、その対極に位置づけられる認知言語学の台頭が挙げられる。この2大潮流は21世紀に入っても基本的に変わることなく、生成統語論はミニマリスト・プログラムを深く追究することで「進化的妥当性」の問題にまで踏み込みうる新たな段階を迎え、一方、認知言語学は機能論や語用論を包み込んで、構文・談話・テキスト等の実証的な分析を拡大深化させてきている。
さらに、言語研究はさまざまな分野において、独自の展開を見せてきている。いくつか例を挙げると、生成音韻論の発展をもとに、隣接部門とのインターフェイスの研究で成果をあげている音韻論研究、言語システムの重要な一部門をなし、研究の精緻化が進む形態論・レキシコン分野、伝統的な文献学の研究成果を踏まえた上で、統語・意味・音韻のそれぞれの領域において理論的分析が進んでいる通時的研究、今世紀に入って新たな展開をみせつつある類型論研究、動的意味論や談話表示理論などが活発な形式意味論研究、電子的言語資料の蓄積・整備とともに目覚ましく発展しつつあるコーパス研究などである。
このような状況にあって、本シリーズは、各分野における20世紀後半の研究を踏まえつつ、今世紀に入ってそれぞれの研究がどのように展開し、これまでどのような研究成果が得られ、また今後期待されるかについて、実証的かつ論理的に詳述することを目指す。このことにより、言語研究の現状を幅広く概観するとともに、今後の研究動向についての展望を示し、理論言語学のさらなる発展の一助たることをねらいとする。
(下線は各巻責代表者)