開拓社 言語・文化選書4
ことばは壊れない
― 失語症の言語学 ―
編著者:
久保田正人 (著)
ISBNコード:
978-4-7589-2504-4
発売日:
2007年10月25日
定価:
1,870円(税込)(四六・216頁) |
内容
失語症患者における言語データの乱れ方は、じつに、「きれい」である。正しく、整然と、乱れている。脱落や誤りがあっても、きちんとその部分の復元ができるように自衛措置が施されており、脳の中に育った言語知識がそうやすやすと壊れないことを教えてくれる。また、障害を起こした脳といえども、そのはたらきがしなやかであることも教えてくれる。
目次
はしがき
第1章 はじめに
1 言語を見る視点
2 「言語」という言葉の意味をめぐって
3 言語の解明に言語を使う―目標と手段が同じであることの特殊性
第2章 言語に関する五つの事実
1 言語の習得は種に特有で一様である
2 言語の習得に学習は不要である
3 言語の習得は一定の時期までにほぼ完成する
4 言語の習得は質・量ともに限られた資料にもとづいて実現される
5 言語の習得には個体差がない
第3章 言語知識の構造
1 生物界を見渡す
2 言語をおぼえるための専用の能力の存在
3 自動解発型の能力と刺激解発型の能力
4 言語知識は二重構造をなしている
第4章 言語と文法
1 言語を定義する
2 生成装置としての文法
3 言語と文法の関係
4 文法は瞬間的に完成する
5 言語の座る椅子は脳の中に一つしかない
6 早期英語教育の危うさ
第5章 言語の情報構造
1 古い情報と新しい情報
2 三種類の古い情報
(i) 既述情報/(ii) 前提的事実/(iii) 随伴的情報
3 新しい情報
4 失語症と情報構造
5 「はい」と「いいえ」
6 否定
第6章 文字と音声
1 言語にとって音声が本来の姿か
2 文字と音声のズレ
3 過去の言語変化は現在も活動している
4 日本語は子音で終わる言語である
5 脳は歴史かなづかいと現代かなづかいを区別しない
第7章 言語と脳―新しい失語症論
1 失語症とは
2 失語症に関する基本的事実の再確認
3 「失文法」の発見
4 症例を分析する
5 主要部の脱落
6 主要部と旧情報―何が壊れて、何が壊れていないか
7 「正しくまちがえる」ということ
8 正常な異常
9 「退行の仮説」再考
第8章 基礎の言語学
1 言語学の基礎
(i) 語彙・形態論/(ii) 統語論/(iii) 意味論/(iv) 音韻論
2 日本語学
(i) 語の構造と語彙体系/(ii) 統語的特徴/(iii) 音韻上の特徴/(iv) 文字に関する特徴
3 心理言語学
(i) 心理言語学とは/(ii) 言語の機能と分化/(iii) 言語と思考/(iv) 言語獲得理論と言語教育/(v) 読み書き能力と認識/(vi) 音声の知覚と認知/(vii) 文章の理解、談話/(viii) 言語障害へのアプローチ
参考文献
索引
初出一覧